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2005年8月10日 (水)

琵琶の湖 4話 暑いのになにすんねん

よろしかったら1話 2話 3話をどうぞ。


「おまえ、いったいどんだけ待たせら気がすむねん。待ちくたびれたわ。ぐったりやで。どないしてくれるー?おれは、知ってると思うけど忙しいねんで。それを、なんでおまえを待って待って恋焦がれた女みたいに泣きそうになってなあかんのや。はぁ、どうせ、ぶつぶつ独り言に没頭してるうちに遠回りでもしてしもたんやろ。おまえのこっちゃ、そんなもんやろ。ふん。」

ああ、うるさい。
「ぶつぶつうるさいのは、おまえのほうやんけ。10分も遅れてへんわ。しかも、適当でええでって言うたんはおまえのほうや。家におるよってかまへんでって。だいたい、ボクを待ってたりしてへんやろが。女の子たちにメールしてるか、悪巧み考えてるかのどっちに決まったある。あー、10分遅れてすまんかった、すまんかったわ。謝るわ、謝ります。そやないと、おまえ、一日うるさいからな。」

ほんまに、うるさいんや。
こいつは、ボクのツレ。
ツレというより幼馴染。
幼馴染いうより、乳母がおんなじや。乳兄弟?たまらんわ。
こいつの父親は、安土桃太城の、元家老の筋で、家臣団の長やねん。
家臣団いうて、今は安土桃太城を支えるボランティア団のことや。
安土桃太城は一応近江の象徴、誇りやからな、そないしてかつての家臣たちが何かと支えてくれてはるねん。

こいつのとーちゃんは、すごいやり手や。
とっくの昔に商家へ転身、近江商人としてがっつり成功しとる。
そやから、火の車のうちなんかより、こいつは裕福に育っとるんや。
ま、そんなことはええねん。
家臣団はそんなとこが多いからな。当たり前やな。心から尽くしますなんて言われても気持ちが悪いだけやで、なあ。

「まあ、ええわ。おれな、仕事が忙しいて、おまえに協力できるかどうかわからへんで。城のかかさまから、パーティにきてなって知らせがきとったで。」
あ、あれや、合コンのこっちゃな。
「かまへん。ほっといたらええねん、おかんのことは。それよりヒロユキ、その格好どないかならんか。いくらオレでも見とうない。」

こいつ、名をヒロユキという。
外で見ると、イケメンや。
そやけど、こいつの外面のよさときたら天下一品。ようまあこんなにふだんと豹変できるもんやと感心するわ。
でれでれだらだら、行儀も悪いし、女にもだらしない。
よう隠せるもんやで、なんでだまされるんか、ぼくにはわからんけど、まあ、外での姿はな、キリリとしたもんやからな。

今日かて、もうよれよれになった越中ふんどしだけで、大股おっぴろげてチュッパチャップスくわえとる。
ヒロユキの部屋はパソコンや仕事に使う道具であふれかえってごちゃごちゃや。
髪もぼさぼさやし、とにかく、そのふんどしやめてくれ。
せめて新しいのを締めてくれや、はみだしとるやないか。

「これか?なんやおまえ、固いこと言うなや。これがええんや。家におるときくらいリラックスしとらんとな。生活にはメリハリっちゅうんが必要やで。おまえみたいに年から年中、なーんや緊張したおももちでおったら、ろくなあいであも浮かんでこんっちゅーもんやで。ええんやでー、この洗いこんだふんどしがたまらんええねんやんか。四角四面はあかん。な、おまえもちょっとおれを見習えや。商売かてやったらええねん。おまえとこ、ほんま今きびしいやんか。うっとこで、城の会計見てるさかいにな、ようわかっとんじゃ。商売の相談やったらいつでも乗ったるで。」

ああ、ああ、ヒロユキ、股をかくなよ、やめろや、汚いなあ。

「そや、そろそろトオルも来るころやで。あ、ちょっとこれ仕上げてまうから待っててな。」
ふーん、トオルも来るんか。
仕上げっちゅうんは、ヒロユキの仕事のことや。
こいつ、魚のフィギャアっちゅうんを作っとる。
趣味やったんやけど、好きが高じて、売れるようになってもうた。
そしたらな、こんなんが好きな人っちゅうんはおるんやな。
驚くほどの値段がつくねん。
同じに魚釣りしとっても違うもんやな。
ボクはそんなもん作りとうもないわ。
琵琶湖の魚だけやのうて、あちこちの海にも行ってはいろいろ見てな、ま凝り性っちゅうんやな。
家に余裕があってヒマやっちゅうんもあるけど、売り出し方もうまいと思ったわ。
さすがおじさん仕込みや。

ああ、なんちゅう格好や、ヒロユキ。
尻も出とる、紐が緩みすぎや。

「おーー。ヒロユキ、おるか〜〜!」
「おるで。勝手に入ってこいや〜。」
あ、トオルや。相変わらずでかい声やな、こいつもうるさい。

「なーんや、モモジョー、おまえもきとったんかいな。」

モモジョー。
これはボクの子どもの頃からのあだなや。
安土桃太城のボンやし、桃太城のボン、桃太城、桃城、モモジョー…。
気に入らん。
気に入らんのや。
気に入らんけど、すでにしゃあない。
そやけど。
でかい声で呼ぶのはやめてくれ。

2005年7月10日 (日)

琵琶の湖 3話 やるつもりらしい…

安土桃太城があるのは近江。
近江といえば、商人や。でもな、その前にボクら琵琶人や。
琵琶人ゆうんはな、広い広い琵琶湖の周りでその恩恵をこうむって生きてる人たちのことや。
ボクら、琵琶湖がなければ生きていけへんねん。
それをな、忘れたらあかんねん。ボク、超まじやで。
京やナニワの人らは、ずうずうしいねん。
ちゃっかり琵琶湖から水もろて生活しとるくせに、そんなん知りまへんわ何のこと言うてはりますのんな顔しとんねん。
たまには、掃除や寄付にでも来たらええねん。

そや、寄付や。ボクは寄付が欲しい。
城の領地に琵琶湖も入っとる。全部やないけどな、すごいやろ。
琵琶湖領有団の一員や。琵琶人としては名誉やねんけど。
名誉はタダちゃうねん。
琵琶湖の美化には、城のメンテナンスどころじゃなく金がかかるんや。
最近の乱開発には頭が痛いわ。

あんまり費用がかかるとな、ボクの心の悪い虫がささやくんや。
特に今頃や、夏や。
雨の多い梅雨ならええねん、でも、降らへん年もある。カラカラや。
京への疎水を閉じたろかいな。
宇治川を堰き止めたろかいな。
琵琶人の使う水のほうが大事やさかいな。
ケチな京都人や大阪人にはやらへんのや。
挨拶してもらわんと、割に合わん。どや、そんなもんちゃうん?

ボクが城主になったら、なんとかしたろ思とる。
ふふん、見とってみ。

今、安土桃太城には城主がおらん。
オヤジがおるやろて?
おったら、ボクがひとりでこないに苦労しとるかいな。
オヤジは3年前に逝ってしまわれた。気の迷い、いや、気の病やな。
まだ50歳になったばかりやったのに。

先祖代々の城主がやられてる病らしいやけど、どんなもんやろなあ。
安土桃太城の初代がな出張中に焼き討ちにあったときに「じんせぇ〜〜ごじゅうねぇぇぇ〜〜ん♪げてんのぉ〜ゆめぇ〜〜」とか唄い踊りながら逝ってしもた怨念らしい。
なぁにが、怨念や。
そんなんなあ、思い込みもええところやで。唄いながら死んだって伝わってるのんも、うそくさい話やで。それに、ええやんか、踊りながら死ねたら本望やで。
まあな、その頃の寿命はそんなもんやったんかもしれんわ。そやけど、いまどきなあ、人生80年は軽いねんで。こんな環境のええところでからだ動かしながら生活しとってみ、おかんなんか、100まで軽く生きるに決まったぁる。おっとろしこっちゃで。
ボクの想像やけどな、代々のおかんが怖ろしいオンナでこき使われて過労死やったんちゃうかいな。オヤジも朝から晩までよう動いとったもんなあ。「あんた、あれしてや。あんた、これもしてや。あんた、頼んどったんはどないしたん。ああ、あんた、腰もんでや。あんた、あんた、あんたぁぁ。」
そりゃ、死ぬで。一日中一緒におるねんで。たまらんわ。

ま、ボクには関係ないわ。あんなおかんみたいなオンナとは死んでも結婚せえへんて子どもの時分から決心固いよってな。

城主になるんは、おやじの5回忌がすんでからに決まっとる。ふつうは3回忌とかするもんやんな。でもうちはちゃうねん。なんでも、昔々、琵琶湖の西にある飛影山の寺ともめたらしいわ。。
初代のオレ様ぶりについては言うたよな、それやそれ。山ごとお寺さんにえらいことしてもうたらしいわ。
お寺の偉いさんと争いになってな、キレてしもたらしい。やりすぎや。ぶぃぶぃや。
それ以来、仏教とは上手くいってないねん、古い話やのになあ。どうでもええやんなあ。で、ふつうはやらん5回忌っちゅうんを機に、城主も正式に継ぐらしい。

ボクはボクでいろいろと思惑があるんやけど。
おかんにもあるらしい。
ま、わかっとる。
嫁取りに決まっとる。それにな、跡継ぎが早う欲しいねん。孫や、男の孫や。
おかんの怖ろしいところはな、いいとこのお嬢さんの嫁と、男の孫は別ものと考えてるところや。

つまり。
孫やったらええねん。父親がボクやったらええねん。
怖いおかんやでぇ、ボクは何度、はめられそうになったかわからへん。
うっかりでも妊娠してくれへんかしら、そしたらええわなあっちゅうこっちゃ。

おかげで用心しすぎて、ボクは25歳にして、まだ童貞のまんまや。
近づいてくる女をみると、おかんの仕掛けやろ思てまうねん。
やりきれん人生やけどな、ボクは琵琶人やし、近江は好っきやねん。

ボクはな、ここで人生作ったろ決めてる。

あ、ツレの家に着いたわ。
ほな、また。

2005年7月 2日 (土)

琵琶の湖 2話 つづいてしまいました…

よろしかったら、琵琶の湖 1話 からどうぞ。

「あんたぁ、お客さんやで、あんたが案内してや。」とおかんから声がかかる。
そんなときの見学者は、たいてい歴史学者、建築家や。
たまに、漫画家や小説家のこともあるな。
ふつうの歴史好きや歴史オタク、ゲーム製作者のときはもう案内はカンベンして欲しいねん。
おかん、人使い荒すぎや。

今日は有名建築家やった。
「ほぉ、さすがに安土桃太城。素晴らしいですな。あの時代によくこんな前衛的な設計ができたものです。いやあ、豊かな才能には脱帽です…。こんな城に住んでらっしゃるなんてうらやましい!」

あんた、ほんまに建築家か?とボクはいつも言いたいねん。
美術館にでもするんやったらええねん。
そりゃあ、おもろい展示ができると思うわ。
そやけど、考えてみ。
どこに美術館に住みたいと願う人がおるねんな。なあ。こんな不自由な住宅はないと思うわ。
いったい何階建てかもわからへんような意味不明な造りで、居住性はゼロやで。
地下から最上階までいくつ階段上るか、子どもの頃、何回数えても途中でわからへんようになってやめたくらいでな、ほんま複雑なんやで。
ああ、シャワーが欲しいわ、こっそりワンルームマンションみたいなのを中にこさえたらええんやろけどそうもいかへんわなあ、おかんが許さんし、費用かて…なあ。
厳しすぎるわ、ここでの生活は。

どいつもこいつも「前衛、前衛、本物の前衛作品は時代を経ても古くなりませんね!」
感激して涙も流さんばかりや。
そりゃ確かにそうかもしれへん。
その意見は正しいわ。
そやけどな、前衛の真ん中で育ってみ。
どぉーでもようなるねんって。
右向いても前衛、左見ても前衛、地下の倉に入っても前衛、おかんの着てるものも前衛のリフォームや。
ボクに言わせれば、ツレの家に遊びに行ったりするとたまらん斬新で涙が出る。
ええなあ、3LDKのマンション。
あこがれるわ。
ええで、10坪の狭小住宅。
工夫がいっぱいや。

安土桃太城には城下町がある。
城は、山の上にあるんや。そういうもんなんやけど。
こんもりした小さな山があってな、その上にそびえるように琵琶湖を見渡せるように偉そうに建っとるわ。
初代ご先祖のオレ様ぶりが想像できようってもんやで。
実際、オレ様度がぶっちぎりにすごかったらしいて、出張中に焼き討ちにあって殺されたらしいわ。
しゃあないわな、ぶぃぶぃやるやつは、どこかで恨みをかったりするもんやで、ご先祖さまの読みが浅かったんやな。

そうやった、すぐ話がそれてまうな。城がな山の上にあるもんやさかい、ボクの苦労いうたらないねんやんか。
幼稚園も学校ももちろん城下町にあるねん。そんでな、走っていくんや。おかげで足腰むっちゃ強いで。
小さい頃から、夜中から朝方には掃除やら手伝いで忙しいし、歩いとったら遅刻すんねん。
「ええか。城下についたら、悠然と歩きや、あんたは安土桃太城のボンなんやで」っておかんにしつこうに言われてるからな、人目につかへんように歩くことも覚えなあかんかってんや。忍者みたいなもんやな、ボンやのに。
ボク、鋼の肉体やで。ジムで作った人工的なムダな見世物筋肉ちゃうからな、使えるからだっちゅうこっちゃ。ああ、自慢とちゃうちゃう。腹減って困るだけや。

でな、城下で行儀悪うしとったら、どっからかおかんに密告が入っとる。
あいつや、おかんの後にそーっとおるあいつがいつも見張っとるんや。

あいつはいったい何者やねん。



えらいことになりましたわ…
わたし、どうしたらいいのでしょ〜〜

2005年6月21日 (火)

「琵琶の湖」

ボクはな、安土桃太城の跡継ぎ息子やねん。知ってる?やろなあ、むっちゃ有名な城やからな。琵琶湖のすぐ近くに建ってるんやけど、ああ、そうやな、説明はいらへんわな。もう何百年も前からある城やで。でな、跡継ぎゆうてもな、別に何するわけでもないねん。見学に来る人から見学料もろて細々とやってるのが現実でな、所領もたいしたことないねん。最近は農地を手放してマンションやら、大型スーパーやらホームセンターにしてしまうんや。そうなると、納めてもらうのは米だけが決まりにいつからかなってしもうて、ジリ貧でな、ボクとしては、もうやめたいねん、跡継ぎ。商売でもやりたいな、思っとる。
昔々は派手やったらしいわ。ええわな、そういう時代のボンに生まれてたらな。
もう修復でもできへんの。金箔なんて張り替えられへんからな、張りぼてや。折り紙の金色のがあるやろ?あんなもんなんや。
台所は火の車やっちゅうことやねん。

その上、おかんはうるさい。
早く嫁をとれーとれー言うねん。しかもな、ええとこのお嬢でないとあかんねんて。めんどうやわなあ。ええとこのお嬢は世話かかると思うねん。タカビーやろし、贅沢やろし、そんなんさせられると思うか?無理なんや。おかんもわかっとるくせに見栄張りよる。
おかんが「この子ええやろ?どうやぁ、話すすめてもええかぁ?」いうてこっそり見せてくれる子はぜんぜん好みちゃうねん。どうせ、資産家の娘に決まったある、おかんの考えそうなことやで。
ボクな、かわいい子が好っきやねん、細ーい、優しぃてな、霞でも食うてるんちゃう?ゆう感じの子。
いてへんわ。

ボクな、毎日特にすることないねん、見学料を払ろてもらうところで挨拶することはあるけどな、あ、あとは掃除や。
こっそり人が来る前に掃除すんねん、おかんの命令や。人件費がえらいかかって大変らしいわ、そやから、目立たん時間はあんたがやり、いうてな、ボクが日が明けんうちに城の庭の掃除をこっそり変装してやったりするねん。
変装するのもおかんの命令やねんで。
おかん、怖いねん。
あ、それからな、見学にくる人らがゴミをぎょうさんほかしていくねん。
やれやれや。
マナーがなってないねんな。それをこっそり始末するのんもボクの仕事なんや。
見学料とってるからな、汚いんはあかんやんな。
ああ、まだあったわ。張りぼてや言うたやんな。何しろ折り紙の金色をうまいこと貼るんやけどな、雨が降ったり風が吹いたり、暑い夏も寒い冬も、持ちこたえられると思うかぁ。
城を巡回してな、見つけ次第金紙をそそっと貼って修理しておくんも、ボクの仕事やわ。

なんや、ボク、仕事してるやんな。
することないことないやんな。
これが、あの安土桃太城の跡継ぎボンなんやから泣けるわ。

おかん。
「あんたのためにパーティするしな。楽しみにしときや。べっぴんさん集めとくからな。あんたのツレも呼んでええで。」
パーティといえば聞こえはええけど、合コンやんか、なあ。
別嬪さんて、どこかのお嬢たちや。お嬢が別嬪て、そんなんウソや。
それに、おかんは賢いわ。
ボクのツレがそろってイケメンやっちゅうこと、よう知っとる。




続く、かもしれまへん。


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