てんかん手術のための検査入院 Feed

2005年4月 6日 (水)

医学生・オジオ 最終回

さようなら、オジオ。
と思っていた。
でも、そこはオジオだ。

最初の大発作のときに、近くにいた先生が飛び込んできて、まずは発作の観察、処置、指示をされたようなのだけど、オジオはその先生と一緒にいたのだった。
オジオは運よく、てんかんの大発作を目撃できたのだ。
そうそう実際に見ることができるわけではないから、それは本当によかったと思う。
その後の分析にも立ち会ったようだった。
よかったよね。
学生さんはできるだけいろんな体験をしていて欲しい。
実習中に「とくに何もなかったなあ…」じゃあ意味ないもんね。
苦しんでちょうだい。

オジオがきた。
「ちゅんちゅんさん。どうですか。大丈夫ですか。」うん…
「ぼく、ちょうど近くにいて発作のとき立ち会えました。」あ、そうなんだ。
「まだ検査は続くんですよね。」そうみたいよ。
「こんな言い方どうか…。あの、頑張ってくださいね。それじゃ。」ありがとう。

おお。
オジオ、座らずにさらりと帰っていった。
すごい。
座らないオジオは初めてだ。
なんとなく、医師風な態度だ。
拍子抜けだ。

「ちゅんちゅんさんに、やられてばっかりだ。明日こそ上手くやります。」なーんて、いかにも学生なオジオだったのに。
1時間半座り込んでいった日は、また眠れなかったらしく。
「すみませんでした。すっかり長居をしてしまって…ぼく…。」後悔して謝っていたのに。
ふーん。

オジオはその後、顔だけちらりと見にきては帰っていたようだった。
もう検査の間のことは細かくはわからない。

すっかり検査が終了し、ちょうど頭に刺さった電極を抜き取るときに、オジオ登場。
なかなか間のいい男になったな、オジオ。
あ、これから電極抜くから見てったら?
「いいんですか?」いいよー。
先生が、オジオに説明しながら抜いている。
消毒して、手当てして、おしまい。

急に改まるオジオ。
「ちゅんちゅんさん、お疲れさまでした。あの、ぼく、今日で終わりなんです。それで、あの、お話できないかもしれないと思って、書いてきました。」とメモを渡してくれた。
「ありがとうございました。もう次の科に行くんです。」
そうなんだ、おしまいなのね、全部しっかり回って、自分に合うところ、ぜひやりたいと思うところを見極めてくださいね。いいお医者さんになってください。
「え?あ、はい。」ぺこり。オジオはニコニコと検査部屋から出て行った。

    ちゅんちゅん様
    二週間という短い期間ですがとてもお世話になりました。
    今日で実習が終わりとなりました。
    ありがとうございました。
    少しずつ体調がよくなるといいですね。(原文そのままなり)
         脳外科実習生
              オジオ

2005年3月26日 (土)

医学生・オジオ 7

わたしの担当の先生は、ちらりとオジオを見ただけで何も言わない。
そういう男だからな。
「どうや?」先生、ものすごく痛かったですよ、聞いてなかった、こんなに痛いなんて。
「そりゃ、しゃあないで。少々のことはな。」少々?これが少々?
「とにかく、発作起きそうになったら、知らせてや。撮影せんことにはどないもならへんしな。発作が起こりそうなことをせなあかんで。検査が長引くだけやからな。眠らんようにしいや。眠ってたら起こすようにするからな。」
はい。わかりました。はぁ。
あれ?
先生、さっぱりしてると思ったら、床屋さん行ったんですか。すっきりしてお似合いですよ。いい感じですね。

先生は、後髪をさわさわしながら、無言で検査部屋を去る。
無愛想な男だからな。

とオジオが立ち尽くしているのに気がついた。
ぼーっとどうしたオジオ?
「ぼ、ぼく、びっくりしました。あー、驚いた。あの…ちゅんちゅんさん、先生が怖くないんですか?」へ?どうして、どこが怖いの?
「いや、あの先生は怖いじゃないですか。ぼくなんて、全然しゃべってもらえないです。」ふーん。
「あんなタメ口利くなんて、すごいなあ、ちゅんちゅんさん。」そ、そう?タメ口利いた覚えはないけど。
「いやあ、床屋行ったん、なんて。怒鳴られそうじゃないですか。患者さんとじゃ立場が違うんだなあ。」当たり前だろ、オジオ。

だけど、あの先生は別に怖くはないよ。ぶっきらぼうなだけで、すごく優しいんだよ、繊細だしね。
「わかりません。ぼくにはっ。」じゃあ、どの先生にいろいろ訊いたりするわけ?
「ほにゃにゃら先生です〜。親切で優しいですからね。いい先生でしょう?」・・・・・・ふーん。

オジオは子どもだ。
ちっともわかってないな。
まだまだだ。
人間をもっと学べ、オジオよ。

この後、わたしは麻酔が切れてさらに痛みが増し、翌日は発作が起き、怒涛の検査の中に入る。
オジオよ、さようなら。

2005年3月21日 (月)

医学生・オジオ 6

基本的にわたしはいつもオジオを忘れて過ごしていました。
だって、それどころじゃないんだもん。
自分の検査はあるし、同室の人の入れ替わりは激しいし病状が変化すれば気にかけずにはいられない。
先生方や看護師さんたちとのコミュニケーションも細々とある。
家族も来る。
優先順位、オジオ最低。
それ、当然。

蝶骸骨ビデオモニタリング検査が始まる前日の日曜日。
抗てんかん剤を断つので緊張。
思い出せば、この日オジオは来なかった。

それはたぶん日曜日で学校がお休みだったからだ。
患者さんにお休みはないのだ、オジオ。
と言いたい。
優しいわたしの検査が始まるというのに様子を見に来ないとは不届き千万だ。
まあ、いい。
わたしも忘れてたんだし。

翌月曜日。
地獄の検査が始まりました。
痛い、ああ、痛かったの。
こめかみに麻酔、アゴの付け根に電極を刺す。
みなさん、この検査、絶対おすすめしませんから。
脳に刺し物するなんて、わたし、バカですから。
車椅子で移動していると病棟で知り合った患者さんたちが、とうとう始まったんやなという見守りの視線を送ってくれている。
右目のまぶたが勝手に痙攣してるの、右側失敗したんじゃないかなあ。
と痛いし心配。

午後にすべてを装着し終わり、コードだらけで検査開始。
グレーのベッドにぽつねんとひとり。
はあ。
ふう。
ため息つく姿もビデオに写ってるんだなあ。
カメラ目線だけはやめようっと。

そこに、オジオ登場。
「ちゅんちゅんさん、検査始まってるんですね。病室行ったらいなかったので。今日からだったんだ。」寝ぼけるなよ、オジオ。担当の患者のスケジュールくらいしっかりチェックしておきなよ。
「ど、どうですか?」包帯ぐるぐるの姿、この検査のことは初めて知ったらしい。そうだろうな。
うん、痛かったよ。
「あ、話をしてもいいんですか?」
うん、ふつうにしてていいの、座ったらどうですか?と丸椅子がないのでソファをすすめた。
オジオ、ソファに座る。
やっぱり座るんだね、オジオ。

「電極刺したんですよね…。」そうだよ、午前中にやったの。見てたらよかったのに。
「ほんとだっ。そうですよね。見せてもらってよかったんですか。うわ、来ればよかったなあ。」うん、せっかくでしょ。見る機会、そうはないんじゃないのかな。
「ああ、でも、午前中は講義なんですよ。」あ、そう。
「あはは、患者さんが、と言えば別に抜けてもいいんですけどね。」・・・・・あんた、おちょくってるの。わたしはね、痛いんだよ。
「しまったなあ。惜しかったなあ。」うん。
「ああ、惜しかったなあ。残念だなあ。」まったくだってば。わたしは見られてもちっともかまわなかったのに。

ガラガラっと扉が開いて、わたしの担当の先生が入ってきた。
蒼ざめたオジオ、ソファから飛び上がる。
「ぼ、ぼく、医学生のオ、オジオですっ。」
びびりあがってるオジオだ。

2005年3月19日 (土)

医学生・オジオ 5

医学生オジオとは、わたしがてんかんの外科手術が可能かどうかの検査入院をしたときに出会った、研修中の医大の5年生。
入院のことを思い出すと、目の前をちらつく男オジオ。
途中まで書いてほったらかしにしていましたが、やはり完結へ向かわないとね。
番外編医学生・オジオ
医学生・オジオ2
医学生・オジオ3
医学生・オジオ4

たいしたことは書かれていませんが、振り返っていただくと理解も深まる。
なんの?
オジオのです。
医学生・オジオをよろしく。



「ぼく、お腹をかなり切ったんですよ。それで長いこと入院して、そのときいろいろ考えました。」ふーん。
「看護学生さんが来てくれて!」うん。
「ヒマなので気が紛れて嬉しかったですね。」それが、何か?
「ちゅんちゅんさんも、退屈してませんか?」わたし?病歴が違うぞ、退屈しらずだ。それより、寝たいんだオジオ、と言いたい。
卒業してからって、ストレートで合格できたの?
「いえ…、そうはいきませんでしたよ。浪人しました。だから、同級生とはちょっと世代差、ありますね〜。いいんですけど。」うん、そうだね、オジオ。そのくらいのことはいい。ただ、わかったぞ、オジオ。

ふつうの大学にストレートに入学、卒業して22歳。それから1年か2年浪人してから医学生の5年。
30歳近いじゃないか、オジオ。
まじまじと顔を見た。
なるほどね、確かに妙に若々しさが足りない気はしていた。
けど、30歳が近いほど、世の中に擦れた感じは全くない。
ずっと学生さんだもの。なるほどー。
そして、本人の特性もあるな。
のほほーん。なるほどー。

オジオはそのまま1時間半ほど話をしていった。
長い、ような気がしませんか。
風呂上りのわたしの時間を。
昼寝を…わたしの大事な昼寝の時間を。

意志は強いんだな、オジオよ。
やるときは、やる。
しゃべるときは、しゃべる。
しゃべりすぎだ。

話は変わる。
わたしの夫おっちゃん。
いちじくが、3年も経つのにあまりなついてないおっちゃんだ。
このおっちゃん、愛想が悪い、と思う、たぶん。
ものすごく話かけにくい感じ、がすると思う、たぶん。
なぜ、と言われても、うーん、そういうタイプなのね。

その夫おっちゃんが珍しく早い時間に突然現れた。
「具合はどうや?」
1時間半、お尻に根がはえていたオジオ。
ばばっと立ち上がった。
ささっと丸椅子をうしろへ。
おっちゃん、オジオのことは目に入ってないらしい。
関心のないことはどうでもよいタイプでもあるのね。

あ、こちら、医学生のオジオさん、今ね、脳外科に研修中なんだよ、とわたしけっこう一生懸命紹介した。
「こんにちは。今、ちゅんちゅんさんの担当にさせていただき、勉強させてもらっています。どうも!では、どうぞお大事になさってください。」ペコリ。
おお!怖ろしく大人な挨拶をして颯爽と去った、オジオ。

とわたしは思った。
だって、ふだんのオジオとは別人に見えたんだもん。

「なあ、ぼーっとした感じの子やなあ。大丈夫かいな。」と夫おっちゃん。
へ?や、やっぱり?
「ところで、検査の前に説明受けるんやな。そのことなんやけど…」とすでにオジオなんてどうでもよく忘れ去った夫おっちゃん。

なんだか、おいてけぼりのわたしだ。
わたしの昼寝抜きとは、若い人の徹夜明けのようなものなのに。
それは少し大袈裟だけど。
明日は邪魔させないのだ、オジオよ。





2005年3月 5日 (土)

医学生・オジオをめぐるひとりごと…

てんかんの検査入院についてまとめておくために、そのときのことの記憶をできるだけ細かく思い出そうとした。
そこで、ちらちらとよぎってうるさかったのが、オジオだ。
そうやん、いたやん、医学生のオジオ
はっきり言って、すっかり忘れはてていた人物オジオ。
それなのに、書き始めてみると、さらに細かく思い出しちゃったじゃないか。

しかも、たいしたオチがないことも思い出す。
どうしよう。
オジオのバカ。

ノンフィクションなんだけど。
フィクションにしてしまいたい欲求が盛り上がってくる。
うふふ。
それならおもしろくできるなあ。
作り話をいっぱいしちゃうのだ。

いや…
せっかくノンフィクションで地味に書いてたのに、おもしろくないからって派手にしちゃうのはよくないよね。
そしたらどうしよう…。
ああ、もうやめちゃいたい。
おお、そうだ。
オジオをいまいち反応が少ないけど、わたしのお気に入り「りえりえちゃんシリーズ」にさりげなく移行させてしまうっていうのはどうだろう。
そう。
さりげなく。

りえりえちゃんがいつものように食べる。食べすぎるのね。
そして、オナカを壊す。
ぎぃが呼びに行った病院にいたのが、オジオ医師見習い。
ぎぃはとにかくオジオにお願いして来てもらう。
・・・・・・・

おお、見事なシフトだ。
ぎぃとオジオの会話が聞きたくならない?
なるなる。
うんうん。
いいぞ、わたし。


こんなこと考えている間に、次回の医学生・オジオを書けばいいんだ…。
逃げるのは、よせ。
うわーん。

2005年3月 1日 (火)

医学生・オジオ 4

オジオはちゃんとお医者さんになれるのだろうか。
わたしはさすがに心配になった。
というのは、女子医学生がやってきたの。
そしてオジオと同じように、神経に異常がないかのチェックをさせてくださいねとすらすらと言い。
さりげなく、つつがなく、さらりとやってのけ、スマートに出て行った。
うーむ、賢そうだ。
学生だと感じさせないスマートさだ。
でも、スマートすぎて顔も声も覚えていない。
こういうのって、微妙。

わたしはその日検査で疲れていて、小さな発作も起こして、早く昼寝がしたかった。
看護師さんがもうじきお風呂ですよと呼びに来てくれるから、そのあと寝ようっと。

「こんにちは。」あ、オジオ…
あー、あのね、今日はこれからお風呂だから。
「わかりました。じゃあ、また。」ぺこりと出て行ったオジオ。

週に3回のシャワーは絶対逃したくない。
少々しんどくても入るもん。
髪も洗うもん。
悪いけど、譲れないし。
ふらふらで戻ってきて、バスタオルを首にかけて、ふーっと一息。
「あ、終わりましたか?歩いているのを見かけましたー。」なんと、嬉しそうなオジオよ。
じゃあ、また、というのは、明日ということではなかったの?
ナースステーションで待ってたのか。
頼む、わかってくれ、オジオっ!な気分が両肩にずおーん。

オジオは「あ、ないですね。」とお向かいのベッドのところから丸椅子を持ってきて座った。
あきらめたわたし。
ほんと、あきらめた。

ねえ、オジオはどうしてお医者さんになろうと思ったの?
「ぼくですか。ぼく、病気して手術受けたんです。そのとき、考えちゃって。」ふーん。
「実は、ぼく、一度ふつうの大学卒業したんです。」へ?
「でも、医者になろうと思って、受験し直しました。」
驚いた。
実は骨太な男だったのか、オジオ。

2005年2月26日 (土)

医学生・オジオ 3

オジオは翌日も来た。
来るのは午後と決まっているらしい。
「あ、椅子を」と言っただけで、さっと座るようになったオジオ。
ふーん、今日は何しに来たのかな。
「ぼく、昨日は落ち込んで眠れませんでした。」あ、そう。
「脳神経外科ってなんか違いますよね…」そうなの?
「ええ!もう全然、緊張感がすごいっていうか、どうしていいかわからないですよー。」わかるかも。
わたしの他にも担当してる患者さんがいるの?
「はい。そ、それが…。ぼくが行っても、学生なんかに話すことはなにもない、あっちへ行けって言われてしまって…。やっぱり、そうなんですかね…」

そりゃそうでしょう。だって、脳の病気になって手術したりして、後遺症が残るかもしれないし、現実仕事を休んだりしてるわけだから、のんびり療養ってわけにいかない人が多いでしょう。
「でも、ちゅんちゅんさん、話してくださるじゃないですか。」わたしもいやだと言ったぞ…
あー、まあ、わたしは、検査入院で切羽詰まってるわけじゃないし、今、すごく具合が悪いわけじゃないから、そこは全然違うと思うけど。

「あのう…足の腱の反射を診させてもらいたいんですけど…いいですか?」何なの急に。足、触るの?いやだけど、しょうがないなあ。
いいですよ。
「ありがとうございます。じゃあ、横になって足を組んでくださいね。」はいはい、え?これでいいの?深すぎないかな…
コンコンコン。(痛いよオジオ)
コンコンコン、無反射。(痛いってばオジオ)
おかしいな、コンコンコン。オジオ汗だくになり始める。(気がつけオジオ、この組み方でダメだと思う。)

仕方がないので、足を反射するようにずらして組み直すわたし。
コンコンコン、ぴーんぴーんぴーん。
「ああ!よかった!!」…痛かったぞオジオ。

「ちゅんちゅんさん、すみません、今日も。」そうだね、オジオ。
「辛いことがあったら、ぼくに何でも言ってくださいね。」………。
「じゃあ、ありがとうございました。」
辛いことを言うのか…オジオに?
しかも、片方の足しかやっていかなかった、オジオだ。

2005年2月24日 (木)

医学生・オジオ2

オジオのことはすぐに忘れました。
入院生活は細々と落ちつかない。
4日分の尿を全部取ってくださいね。はい。
簡単なことだけれど、トイレも気楽には済ませられない。
はい体温計、はい血圧測ります、はいお薬は飲みましたか、はい昨日はトイレに何回行きましたか、はい便は出ましたか、検査室へ行ってきてください、と細々と続きます。
食事のたびに、どのくらい食べましたか?と聞かれる。かなり具体的に答えなくてはなりません。
わたしは食欲にムラがあります。こういう場所ではどうも食べられない。周囲は「なんもしてへんのに、全部食べてしまったわ、太るわ〜」とか「ごはんを少し残しただけです」とか。みなさん召し上がってる。いいな。
ちゅんちゅんさん、また食べられへんかったんですか?ごはん少なめにしてもらいますね。
お茶碗が子ども用みたいに小さくなった。でも、だからといってたくさん入るわけじゃない。しかも無茶な献立があったりする。
夕食におでん、ひじきの煮つけ、ごはん、バナナ。
バ、バナナ、絶対に合わない。
薬に関しても飲み忘れたことはないと言っているにもかかわらず、毎日袋の中を数えてチェックしている。
5日目に「ほんとに自分で管理できるんですね〜。」・・・だから、できるって言ってるのに。

いいんです、患者をほったらかしにしない、細やかな看護です。
最初に聞かれました「看護師に言っておきたいことはありませんか?注意してほしいこととか。」
あります、昼寝をするので、そっとしておいてください。あ、昼寝ね、わかりました。

なのに、起こす。
「ちゅんちゅんさん、大丈夫ですか?身動きもしないから。具合悪いですか?」
あー?あ、はい、昼寝してただけです。(起こさないでって言ったのに)
不機嫌なわたし。
そこへ、オジオ登場。
丸一日、すっかり忘れていたオジオ。のっそり扉から顔をのぞかすなよ、オジオ。
「いかがですか?オジオです。あ、あのぅ、少しいいですか。」ぬーぼーとドアの前に立ちっぱなしは、じゃまになるよオジオ。
座ったらどうですか?嬉しそうなオジオ。
「はい、では。」丸椅子を転がそうとしてあわてるオジオ。
落ちつけオジオ、目が泳いでいるぞ。

「ぼ、ぼく、今日は、ちょっと、ちょっとお願いしたいんですけど。えーっと、いいですか?」いいですよ。
「あのう、ここを見ていてください。」とボールペンをわたしの目の前に出して立てる。
「それから、それから、ボールペンを見たままで、ぼくの手が見えなくなったら、教えてください。わかりますかね。えーー。」
わかったから、やってくれ、オジオ、視野の検査をしたいんだろう?
指をふにゃーーっと動かすオジオ。ボールペンが揺れて、指も揺れている。
「やりたいことはわかるんだけど、それじゃ、どうしていいかわかんないでしょ。」

とわたし、オジオのボールペンを奪い、オジオのやりたいことをオジオに向かってやってみせました。
「ちゅんちゅんさん、上手いですね…。」というより、あんたが下手すぎると思う…。
「これは器具を使わずに神経に異常があるかどうかみるものなんですけど。」うん、わかってる。
「ぼく、言い方悪いですよね。」うん、悪いんじゃないかな。。
「どう言えばいいんだろう…難しいな。友だちと練習したときはできたのにな。」あ、そう。

黙って座っているオジオ。
「ありがとうございました、また、お願いします。」
背中が寒そうなオジオ帰る。
もう来なくていいんだけどな、オジオ。

2005年2月23日 (水)

番外編:医学生・オジオ

入院してすぐ、若い先生に連れられてきた学生。
それがオジオくん(仮名)です。
「今日から脳神経外科で研修なので、ちゅんちゅんさん、よろしく協力お願いしますね。」
いややん…。
オジオは、のーんと痩せて背が高い医学部の5年生。
5年生になると2週間ずつ各科を回るらしい、ここが2ヶ所目。
震えてるやん、だいいちめんどくさいやん、しんどいもん。

「先生、絶対協力しないといけないんですか。わたし、いやなんですけど。」
「…う。えー、大学病院とはですね、研究機関でもあり、人材育成うんぬんかんぬん・・」
「あーはい。(しょうがないよね)わかりました。でも、いやな気分のときはそう言ってもいいですか?」
「もちろん、もちろんです。彼は、オジオさん。よろしくお願いしますね。」

オジオよ。わたしはいやだよーと、ちゃんと表明したのだ。
どーする?オジオ。

たぶん、つづく…

2005年2月22日 (火)

伝わりますように

本当に思ったよりも長く長くなった。
ほんの3週間ほどの検査入院で。
これでも、省いた事柄がたくさんある。

検査を受けたことでのマイナス部分はひとつだけ。
夫や妹にあんな顔をさせてしまった。
あんな辛そうな顔を見てしまった。
そのことだけは、忘れずに刻んでおかねばならない。

何かを心から受け入れるということはこんなにも難しいことだとは、わたしが不器用であるからなのだろうか。
わたしは、まだ何も為していない。
為すこともなく、迷ってばかり、遠回り、寄り道してばかりきた。
病歴の長いにもかかわらず、やっとここまでだ。
本当の意味で向かい合い手を取った。
この検査が表面上何も変化をもたらさなくとも、大きな転機になったことは否めない事実だと書いてみて改めて気づく。

何かを為さねばならないのか、生きていければそれでいいのか、それはわからない。
それも、生きていかなければわからない。

病気を得ること。
それは不自然なことではない。
不幸ではない。
不運ということはあるかもしれない。
逆らえば滅ぶ。
寄り添っても滅ぶかもしれない。

途中で出会う人や見る風景に心を寄せて欲しい。
病気で欠けた部分を補おうとする自分の力強さに気がついて欲しい。
汚いものの中に光るものが。
美しさの中の醜悪さも。
そこにしかないものを見逃さないように。

実は誰しもが朽ちる過程にいるのだから。

また迷ったときに、ここに戻ってこられますように。
わからなくなったときに、ここに至っていたことを思い出せますように。





************************

ずっと、読んでくださったみなさま。
ありがとうございました。
何にしろ、病気のことは微妙に心を刺すことがあります。
できるだけそうでないようにと心がけはしましたが。
不愉快がなければと願うところです。

もう今は書くことが見つからないと思います。
ここへのコメントのお返事は無理かと思います。
ご容赦ください。

ちゅんちゅんの陶芸ブログはこちら

フォトアルバム
Powered by Six Apart