おはなし Feed

2006年11月23日 (木)

代理心臓

ここではない別の世界では、この世界とは違うもっと妙ちくりんな科学が進歩しておりました。
科学は人の欲にしたがって進歩いたします。

それにしたがい医学も進歩しておりました。
ここではない別の世界でも、「もっともっと」からは逃れられないようです。

先進医学の中に「弱っちぃからだに悩む人に朗報!」というのがありました。
信じられないようなことなのでございますが、弱っちぃからだの持ち主の心臓と
強いからだの持ち主の心臓をすっかり取りかえると、あら不思議。
弱っちぃからだは、すくすくと強く健康になれる、というのです。
心臓タイプはぴったりでなければなりません。

しかし、あまりに怖ろしすぎるではありませんか。
生きたまま、心臓を取りかえっこするのです。
そして、強いからだの持ち主の健康は保証されるものではない。
なにしろ、大手術ですし、強いからだを維持してた心臓を失うわけなのですから。

ここではない別の世界の日本では、そんなことは法律上禁止されておりました。

それなのに、弱っちぃからだを持って生きてきたCちゃんは、このことを知り、
どうしても強いからだが欲しくなってしまったのです。
最初は「そんなこと、ダメだよ…」と言っていたのに、魔がささやきました。
「わたしだって、健康になりたいよ、だれだってそうだよ、反対なんてできないよね」
そうして、どうにか、その手術が受けられないものだろうかと手を尽くして算段したのです。
A国に行けば、受けられる。
A国に渡れば、ぴったりの心臓の持ち主がいる。
A国にお金さえ持っていけば、Cちゃんは健康になれる。

少しだけ悩んだけれど、Cちゃんは必要な経費を持って渡Aいたしました。
Cちゃんの住む国はお金持ちだったのです。

Cちゃんは斡旋業者と会い、ぴったりの心臓を持つ強いからだのBさんには会わずに、心臓交換手術を受け、無事に成功しました。
交換相手とは没交渉がおきてです。
斡旋業者から300万円ほどがBさんに渡るらしいということを聞きました。
業者に渡したのは1000万円です。

うわさでは、Bさんは借金に困っていたらしいということでした。
Cちゃんは、そのときになって初めて、Bさんはわたしの弱っちぃ心臓になったら、前より働けなくなるんじゃないかしら。
借金に困っていたなら、強いからだで仕事ができたのではないのかしら。

ここではない別の全世界の生活格差の広がりは想像を絶していました。
Cちゃんは、Bさんの属する階級で300万円を稼ぐのは10年はかかるということを知らなかったのです。

Cちゃんは、わたしは健康になったのよ、と堂々と胸を張りたかった。
できなかったいろんなことを楽しくやりたかった。
仕事で無理もしてみたかった。
気にせず好きなだけ旅行も行きたかった。
余裕で人のお役にも立ちたかった。
スポーツも思い切りやりたかった。
全部かなったのに、Cちゃんはなんの満足感もえられません。

何かをあきらめるとあきらめないのギリギリのところで見つかる宝石が、もうCちゃんの中からすっかりなくなってしまったのです。
宝石箱はからっぽになってしまいました。
カラカラという音さえしません。

仕事をしても旅行をしてもスポーツで素晴らしい成績を残しても
周囲に本当に親しい人はいなくなっていました。

Cちゃんは、満足するということも、あきらめる方法もわかりません。
ありあまるエネルギーだけは使わなければなりません。

夕陽が沈むのをじっと見つめることは、とうに忘れました。
いつも前を向いているのに、目には何も映らなくなっていきました。


2006年7月 8日 (土)

困ったちゃん

うちはコマッタチャン。
うちの前の宿主はな、トミさん云うてもう亡くならはった。
トミさんと会うたんは、そやねえ、前の戦争の後やった。
そろそろ空襲のあとも立ち直りを見せてきたころでな、元気で明るい卵屋さんのおかみさんをしてはってん。
卵屋さんて今の人は知らへんかもしらん。
以前はな、店先に赤い卵、白い卵、ちゃぼの卵、うずらの卵と並べてな、一個がなんぼで売ってたんや。
「ちゃぼのんを5個くれへん」と云うような注文のしかたをすんねん。
大きな声でほがらかやし、卵は高級品やのによう売れるしな、困ってへんやろし大丈夫や思てとりついたんやけど。
ほんまは、ものすご困ってはったんや。
うちは、いつもそうや。
困ってるようには見えへんしええやろ思て、失敗すんねん。
人は見かけではわからへんねんな。

そやけど一度とりついたら出ていかれへんことに決まってる。
トミさんにはきのどくしたわ。
だんなさんがな、いはってんけど、これがもうぐうたら亭主でな。
おらんほうがましやんか、っちゅうおひとや。
うちは、気がつかんかったわ。
ぐうたらやから、店先で働いてへんかってん。
家にもいてへんし。
得意なんは、お金を使うことやったわ。
好きなんはな、競馬や。
ありがち思うやろ。
ちゃうねん。
賭けてすってしまうだけとは少し違て、競馬のなんとかっちゅう馬に入れ込んで、その走りが見たいがために全国追っかけするねんか。
そう云うんはあんまり聞いたことなかったわ。
賭け事が好きいうのんはようあることやけどな。
馬を追っかけて、なあ、それでどうなるねん云いたかったわ。
おらへんほうがまし、云うたけど、ほんま家にはろくにおらんかった。
すっからかんになると戻ってきて、かーちゃん、金くれ、もう府中へ出発してもうた、急がんとあかんねんっ、到着したときの顔しっかり見んとなっ。
髪もぼーぼーのまま風呂にも入らんと飛び出していくねん。
ぐうたらなんか、マメなんか、わからへんかった。
子どももいてたんやけど、これがまたえらいことでなあ。
はぁ、まあ、ええわ…。

いろいろあってんけど、トミさんはそれなりに長生きしはりました。
いつも困ってはったわ。
うちのせいなんやろな。
なんせ、うちはコマッタチャン。

宿主が成仏するとな、うちは放浪することになるねん。
次の宿主を探さんと、なーんやだんだん元気がのうなってくる。
放浪のとちゅうでな、トリツキの仲間に会うたら「おい、おまえ、はよせんとあかんのんちゃうん。やつれてきてるで。一緒にさがしたろか」

うちら、宿主に寄生してるわけちゃうねんで。
人間にもトリツキが必要なんやけど、あかん、宿主がいーひんと落ちつかへんゆうか、元気が出えへんゆうか、うちがうちでのうなるゆうか。
とにかく、うちは新しい宿主を探して、でも妥協はできへんし、でふらふらしてました。

大阪の東。
自転車で買い物から帰る女の人を見つけたんよ。
前のカゴにいっぱい袋を積んで下げて、しゅるるるるるーと走ってたわ。
うしろにひょいと乗っかって、家についていきました。
家は小さいけど、粘土でお茶碗やお皿や壷を作ってる元気そうで明るい女の人やん。
他のトリツキはいてないみたいやし、ええ感じかもしれへん、うちの新しい宿主にしよ。
うちはうれしかったわ。
やっと落ちつける。

そのひとはな、ちゅんちゅん云う名のひとやった。


つづく。




2005年12月17日 (土)

あるサンタの苦悩

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イヴブーツのなげきからのつづき

「あんた、来年はその衣装やめてよね。」
ワンダさまは、昨年の12月25日、わしがふらふらになって帰ったところを見てそう言いんしゃったと。
「なんでですか?」
「なんで?いやぁね、だからやってらんないのよ。そんな、ド○キホーテやコー○ンにでも売ってるような衣装でここから仕事に行かれちゃ、たまんないわ。だいたい、蹴る気にもならないじゃない。ふん。」
「いえ、代々サンタはこれと決まっとりますけん。」
「それがどうしたっていうのよ、もうちょっとどうにかしなさい。そうね、オートクチュールにしましょう!」

ワンダさまは、すぐさま手配なさったとよ。
そういうことはすばやい人ですたい。
全身赤という色だけは譲れんっちゅうわしの意見を取り入れてくれんしゃったけん、D&Gとゴルティエとかいうところからは断られたげな。
わしは、このままでよかっち思うっちゃけどくさ。
シャネルやヴィヴィアンウエストウッドとか、ようわからんけど、無理ば言うたらしいと。

それでもわしの仕事着はシャネルに決まったごたる。
ワンダさまは「ヴィヴィアンもよかったのよねぇ…」とつぶやいとんしゃったけど、わしにはどげんでんよか。

その仮縫いに出かける途中のことやったとです。

わしは「クリスマスの飾り狩り」に会うてしまったとです。
そう。
みなさんの見たまんま、わしはサンタクロースですたい。
疲れてベンチでうとうとしとるところを、捕まってしもた。
不覚ですたい。

今ごろ、ワンダさまはどげん怒っとんしゃあやろうか。
想像しただけでも怖か。
ああ、ワンダさまとは、わしのご主人さまたいね。
なんちゅぅか、微妙な関係ですたい。
別にわしはワンダさまのところにおらんでもいいっちゃけど。
わしはどうも、ワンダさまに弱い。
無理を聞いちゃるのが好いとうとです。
まあ、そげんこた、よかやんね。

わしは財団法人サンタ会に属しとる。
ん?知らん?
まあ、よかたい。
ワンダさまは財団法人の理事でもあらっしゃらると。
わしがお願いしたと。
スポンサーのひとりたい。
なんば言いよっとね。
サンタもいろいろ走り回らな、とてもプレゼントやら用意できんとよ。
このところの財団の財政難ったらひどいもんでくさ。
悩みは深かたい。
あーた、ちょぉっと考えてんね。

最近の子どもの欲しがるものときたら、まったく、どれもこれも高価で。
しかも、すぐ飽きよる。
飽きよるけど、どげんかして用意して配って回らないかん。
財団も火の車たい。

その金策に飛び回って、わしはげっそり痩せとる。
どのサンタもそげんたい。

そんな苦労をワンダさまには知られとうないけんね。
ごろごろしとると思っとんしゃろうや。
そんでよかとよ。

わしの悩みは転勤でワンダさまのそばを離れないかんかもしれんってことやんね。
財団が居場所を変えるらしいと。
日本はもうよかやろっちゅう話やん。
引き上げたい、引き上げ。
ケーキだけでん、喜ぶ子どもたちもおるけんね。
そっちば回ろうかっちゅう話がでとるとよ。

ああ、こげなところに飾られてる場合じゃないと。
仮縫いって時間のかかるとやろか…。
早く帰ってワンダさまに叱られたい。
今年はまだ注文取りにも回っとらんけん。
もう無理かもしれん。
よか。
わしは回る先を絞るたい、強い希望のない子のところはすっ飛ばすけん、よか。

それよりなにより。
わしはワンダさま。
ああ、やつれたわしは見せとうない。
というより、この衣装のまんまでは帰りとうない。
蹴ってもらうためには、太って新調してお尻をどっしりと…。
痛い尻がなんともわしのクリスマスたい。

どーする。
どーするとね、わしっ!


2005年12月15日 (木)

イヴブーツのなげき

5pbzmbpw 美しく生まれてしまったブーツの独白

早く帰らなければならないのです。
私ときたら、この時期恒例になってしまった「クリスマスの飾り狩り」でうっかり捕らえられてしまい、こんな某ホテルの玄関に吊られてしまっている始末。
あのお方に知られたらどんなに叱られることでしょう。
ああ。

あのお方とは、ワンダさま。
私はワンダさまの365足ある靴のうちの一足の片割れでございます。
私たちの仕事は年に一日、12月24日でございます。
ああ、片割れがどんなに心配していることか。

私たち「赤いイヴブーツ」は、虫干しのために散歩をしておりました。
そこで「飾り狩り」にばったり出会ってしまったのです。
なんという不覚!
やつらもいいものを、と必死のようでした。

私たちの仕事とは。
12月24日の夕刻。
ワンダさまは、サンタクロースのお尻を蹴る。
「さあ、お行き!あんたの仕事は今夜だけなんだからね。
まったく、いいご身分だわ。さっさと行きなさい。」
ボカスカガンガンッ!
一年間だらだらしていたサンタクロースはどっぷり太ってお尻も大きい。
ワンダさまに蹴られでもしなければ「いやだよぉ。こんなに寒いのにどこにもいきたくないよぉ。」
と暖炉の前でごろんごろん。
情けないったらありません。
実情はそんなものなのでございます。

去年はヒールが折れました。
片割れのヒールがです。
ワンダさまのキック力は素晴らしい。
大丈夫、ちゃんと修理、補強もいたしました。
だから。
私は帰りたいのです。

助けてください。
時間がないじゃあありませんか。

つづく…


2005年2月27日 (日)

りえりえちゃん 7

外は雪です。
薪ストーブの火がちろちろと揺れています。

寒いよ、ぎぃ、もう薪があんまりないのにどうするの。
ぎぃがお芋を焼いてばっかりいるから薪がなくなるんだよっ。
りえりえちゃんは、寒くて毛布をぐるぐる巻きにしています。
毛糸の帽子もかぶっています。
毛糸のパンツもはいています。
でも、寒いの。
ぶるぶる。

りえりえちゃんが、お芋食べたいって言ったのになあ。
一緒に食べたのになあ。
ぎぃは、人間のりえりえちゃんほど寒くないのです。
りえりえちゃんの背中をさすりながら頑張っていました。

ぎぃ、いいこと思いついたよ。
熊さんになろう。
突然、りえりえちゃんは元気になって、キッチンの食べ物をストーブの周りに集めて、あっためたり焼いたりし始めました。
あのね、いっぱい食べて冬眠するんだよ。
そうすれば、目が覚めたら雪どけの春なの。
そうしようそうしよう。

ぎぃはよくわからないけど、あったかいミルクをたっぷり飲んだり、おもちやおにぎりを焼いたり、残りのお芋も全部ほこほこにしたり、りえりえちゃんと春になったら何をしようかをおしゃべりしながらたっぷりおなかいっぱい。

ふたりは、すっかり満腹、満足したらふわふわと眠たくなり、ぎぃ、さあ冬眠だよ・・・。
ぐぅ。
ぐぅ。
ぐぅ。

おはよう!
春だよ、明るいよ!
ぎぃは、りえりえちゃんに揺り起こされました。
うわーい、外に飛び出したりえりえちゃん。

晴れて光り輝く雪景色。
白く反射して眩しくきれいです。

りえりえちゃんは、顔を真っ赤にして、腕をぶんぶん振り回しました。
ばかばか、ぎぃのばかばか、もう食べるものないもん、ストーブないもん、春じゃないもん。

しゃんしゃんしゃんしゃん。
ソリに乗り丸々と太った黒猫さんが雪の中やってきました。
「おじいさんからのお届けです。ハンコくださいにゃ。」
太った黒猫さんは、ソリから薪やりんごやお米やお菓子やいろいろをどっさり下ろして、ばいばい。
ニヤリと笑った黒猫さんは、ぎぃにこっそり。
「途中で春一番さんに会ったのにゃ。元気だったのにゃ。あと少しで雪どけにゃ。」
スイセンの小さな花を一輪、胸にさしてくれました。


2005年1月17日 (月)

「震災10年」りえりえちゃん

りえりえちゃんは鼻をずるずるさせて散歩をしていました。
ぎぃはわがまますぎるよっ。
寒い夜、左手につかんだぎぃがぐいぐいと引っぱるのです。
いつもとさかさまです。

袖で鼻をふきふき歩いていくと遠くでぼんやり大きな灯りが夜空にもれています。
ぎぃが行きたいのはそこ。
りえりえちゃんも、いやだけど不思議な感じが大好きなのでがまんがまん。

数え切れないろうそくが点る公園がありました。
ひとたちは両手でろうそくを握りじっとしています。
りえりえちゃんは、美しい灯りの中をぎぃと歩いて回りました。
どこまでも。
どこまでもそれはつづいていました。

ねえ、ぎぃ。
ろうそくは、シアワセと祝福よりも
悲しみと祈りのものなんだね。

空気は深々と冷えて
東のほうから少し闇がとけていきます。

りえりえちゃんは、腹が立ってきました。
ぎぃが悪いんだよっ。
おなかがぺこぺこだもん。
もう歩けないもん。
ぎぃだって同じ気持ち。
泣きたいけど泣いちゃいけないので、ますます泣きたくなってきました。

甘いいいニオイがします。
道端に湯気のたつ大鍋がふたつ。
おじさんとおばさんが毛糸の帽子をかぶって、悲しみと祈りの公園から帰ってきた人に
おしるこを配っています。

はい。おじょうちゃんたち。
熱いからね。
おじさんがりえりえちゃんとぎぃにおしるこカップを、ほい。

ぎぃはあわてて「おじちゃん、あのね、違うんだよ。」と言いますと。
黙ってにっこり笑ったおじさん。
おばさんは、りえりえちゃんの鼻をふいてくれました。

2004年12月21日 (火)

りえりえちゃん 5

ひどいよ、ひどいよ。
りえりえちゃんは、自分に怒っていました。
星がひゅるひゅる流れる夜をすっかり忘れてしまっていたのです。

いろんな味のコンペイトウが落ちてきたんだって!
もう、がっかりです。
ぎぃはなぐさめる言葉もありません。

あの日、りえりえちゃんは、落ち葉をいっぱい集めておイモを焼いたのでした。
途中で落ち葉が足りなくなって、がんばらなくてはいけなかったのです。
疲れておなかがいっぱいで、ぐうぐぐぐう。

おじいさんから手紙がきました。
「りえりえや、あそびにおいで。」
ふーん、めんどくさいなあ。
ぎぃ、お出かけするよっ。

坂をのぼり、右にまがり、くねくねと細い道をゆくと小さな川が流れています。
おじいさんが石で作った橋を渡ると三角屋根の家からほこほこと煙がたちのぼっています。

おじいさん、りえりえだよ!
来てあげたよっ。

目が細めておじいさんが笑っています。
ほほほほ、来たかいな。
腰をさすりながら立ち上がり、きれいなビンを出してくれました。

ほら、りえりえや、やろう。

ビンの中にはコンペイトウがころころと入っていました。

わああああ!

おじいさんは、星が流れる日、網を持って落ちてくる星を、ほいひょいほい。

ぎぃは、おじいさんのお手伝いをします。
あったかいミルクをみっつ。
バニラ味のコンペイトウをぽとんぽとんぽとん。

りえりえちゃんは、ほっぺたが真っ赤になりました。

2004年11月25日 (木)

りえりえちゃん 4

ぎぃは、こまっていました。
りえりえちゃんが大きな街ばかりを散歩するからです。

ぎぃはりえりえちゃんの左手につかまれてついてゆきます。
階段をのぼったりおりたり
地下はくねくねしています。
自転車がいっぱいでころびそう。
人がうごく森みたい…
ぎぃは泣きたくなっちゃいます。

すれ違う街ゆく人やウインドウの前でくぎづけになるりえりえちゃん。
「あのピンクのスカートはあたしのほうが似合うもん。きっとね。」
「セーターの色が赤だったらな。あたしがもらってあげてもいいよーっと。」
すぐにぷんぷん怒るんです。
泣きたいのはりえりえのほうだよっ。
ぐいぐいぎぃをひっぱって帰ります。

今夜もりえりえちゃんは街をお散歩。
空がせまくてつまんないけど。
ぎぃはマンホールや舗道のもようがいろいろあるのに気がつきました。
街の地面はハンコをたくさん押して作ったんだな。

「これがあたしのツリーだもん。決まったもん。」
りえりえちゃんが叫びました。

そこには、きらきら光るブーツとキャンディがたくさんつけられたクリスマスツリーが静かにそっと輝いていました。
りえりえちゃんは、毎晩、あたしのツリーを探してお散歩していたのでした。
夢中で見つめるりえりえちゃん。

りえりえちゃんの大きな目の中のきらきら星のほうがきれいだな。
ぎぃは、そう思っておっとり丸まり目を閉じました。

2004年11月19日 (金)

赤頭巾ちゃん

Jxs_nvs4 シャルル・ペローの童話集の「長ぐつをはいた猫」を読んだとき、赤頭巾ちゃんのページもめくってみました。
赤頭巾ちゃんの本当。

かわいいかわいい女の子がいました。
おばあさんが、赤頭巾を作ってあげてそれをいつもかぶっていたので、みなが赤頭巾ちゃんと呼んでいました。

ある日、おかあさんが「赤頭巾ちゃん、おばあさんが具合が悪いらしいの。クッキーを焼いたからバターの壷と一緒に届けてちょうだい。」
「はーい。」

赤頭巾ちゃんは、森の奥の水車小屋の向こうにあるおばあさんの家へひとりでお散歩です。
森には、おなかをすかして、かわいい女の子を食べたいなあと思っているオオカミがいました。
でも、森にはキコリがたくさんいるので、めったには近づけません。

のんきに歩いている赤頭巾ちゃんを見つけ、オオカミは話しかけます。
「どこへ行くの?」
「おばあさんのところへクッキーとバターの壷を届けにいくのよ。」
「おばあさんの家はどこにあるの?」
「森の奥の水車小屋の向こうよ。」
「じゃあ、ボクはこっちの道から、君はそっちの道から、どちらが早いか競争しようよ。」

オオカミは大急ぎで走っておばあさんの家にいきました。
「あたし、赤頭巾よ。」と女の子になりすまして家に入りこみ、驚くおばあさんをむしゃむしゃ食べてしまいました。
そして、おばあさんのベッドにもぐりこみ、赤頭巾ちゃんを待っていました。

赤頭巾ちゃんは、蝶をおいかけ、花をつみ、のんびり歩いておばあさんの家につきました。
「おばあさん、赤頭巾よ。クッキーとバターの壷を持ってきたの。」
「おお、待っていたよ。」としゃがれた声が聞こえます。
怖くなりましたが、おばあさんはカゼをひいているのだろうと家の中に入ります。

布団をかぶって隠れているオオカミは「テーブルの上にクッキーをバターの壷をおいて、こっちにきて、ベッドに入っておくれ。」
そのとおりにした赤頭巾ちゃん。
「まあ、おばあさん、なんて太い腕なの。」
「おまえをしっかり抱いてやろうと思ったんだよ。」
「まあ、おばあさん、なんて大きな足をしてるの。」
「早く走れるんだよ。」
「まあ、おばあさん、なんて長い耳をしてるの。」
「なんでも聞いてやろうと思ってるんだよ。」
「まあ、おばあさん、なんてお大きな目なの。」
「なんでも見てやろうと思ってるんだよ。」
「まあ、おばあさん、なんて大きな歯をしてるの。」
「おまえを食っちゃうんだ。」

そういうと、オオカミは赤頭巾ちゃんをむしゃむしゃ食べてしまいました。


わたしが知っている赤頭巾ちゃんは、この後、帰ってこない赤頭巾ちゃんを心配して探しにきた人が、おなかいっぱいでぐうぐう寝ているオオカミを見つけ、腹を切って、助け出すのです。
本当は。
むしゃむしゃ食べられたところで。
おしまい。

教訓:世を知らぬ若い娘さん、特に愛らしい娘さん、おなかぺこぺこのオオカミがたくさんおりますぜ。爪も牙も隠し、甘い言葉で抜け目なく近づいてくるのです。どうかご用心。

誰も助けてはくれない。

惨い結末の誘拐事件が起こる昨今です。
これは童話としては読めませんよ。



2004年11月17日 (水)

長ぐつをはいた猫

5ub0zd3e 3人の息子を持つ粉ひきがなくなりました。
彼はそれぞれ、粉ひき小屋、ロバ、ネコを遺産として息子に譲ります。
ネコをもらった息子は嘆く。
「ネコを食べて、マフにしちゃったら、あとは飢え死にするだけ。」

それを聞いていたネコは、ご主人にお願いをします。
「ワタシに長ぐつとヒモのついた袋をください。」

長ぐつをはいたネコは、森で死んだふりをしてウサギを捕らえ袋に入れて王さまのもとへ。
「王さま、ワタシの主人カラバ侯爵からのみつぎ物です。」
「おお。カラバ侯爵に感謝の気持ちを伝えておくれ。わしは嬉しい。」

それから、たびたび、ウサギや鳥や狩りの獲物を王さまに届けておりました。

ネコはある日、ご主人にこう言います。
「ワタシの言うとおりにしていると運がやってきますよ。いえいえ、ただ、川の中につかっていればいいんですから。」
カラバ侯爵は、わからないけど、そのとおりにしていました。
王さまがお姫さまを連れて馬車でとおりかかります。
「おおおーい、たいへんです。カラバ侯爵が溺れてらっしゃるんです。助けてください。」
王さまは、その声を聞き、馬車からのぞくと、いつもの長ぐつをはいたネコが叫んでいるではありませんか。
急いで供のものに助けさせます。

ネコはこっそり、主人の服を隠しておきました
「主人が川にはまっているあいだに、泥棒がやってきて、着る物持ち物すべてをもっていってしまいました。」
王さまは、すぐに、いちばん立派な服を用意して、カラバ侯爵にやさしくしたのです。
カラバ侯爵は、実は、ハンサムな男。
立派な服を着ると、それはそれはの男っぷり。
お姫さまはひとめで夢中になってしまいました。

ネコはもう舞い上がって、王さまの馬車の前をゆき、通りすがらの百姓たちに「王さまの問いかけがあったなら、ここはカラバ侯爵の領地でありますとそのように申し上げるように。そうしないと、食っちゃうぞ。」
百姓たちはちぢみあがります。
そうして、王さまは行く道通る畑、広大な領地がカラバ侯爵のものだと聞き驚いたのです。

ネコは最後に大きなお城にやってきました。
城主は人食い鬼で大金持ち、領地はすべてこの鬼のものだったのです。
ネコは下調べをしっかりすませて、鬼に挨拶を求めます。

「あなたさまは、あらゆるものに変身することがおできになるそうですね。ライオンや象などにもなれるのですか?」
「もちろんだとも!」とガオォ、ライオンがあらわれます。
ネコはおったまげて飛び上がり、かくれてしまいました。
「はあ、こわかった。すばらしい。でも、まさか、ネズミになんかはなれないでしょうね。それは無理ですね。」
「なにを言う!わしにできないことはない。」
ネズミになった人食い鬼は、ネコにちゃっちゃと食べられてしまいました。

馬車にのった王さまとお姫さまとカラバ侯爵がやってきました。
「これはこれは、カラバ侯爵のお城にようこそおいでくださいました。」
「なんですと!侯爵さん、これがあなたのお城とは。ほんとうですか?」
「ええ、ええ、もちろんですとも。」

王さまは、嬉しくなって、カラバ侯爵にお姫さまのお婿さんになってくれるようにお願いしたのです。
粉ひきの息子のカラバ侯爵はうやうやしくおじぎをして、めでたくお姫さまと結婚しちゃいました。


**************************************

フランスのシャルル・ペローの童話「長ぐつをはいた猫」

教訓1:人間、知恵が大事ですな。
教訓2:人間、見た目も大事です、バカにしちゃあいけませんぜ。

わたしの誤算。
ネコは底知れぬ不気味さを持っていて怖いかも、のはず。
ネコは底知れぬ甘えん坊、でした…
思いこみは、必ずやぶられるもののようです。



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